犬の肥満とは適正体重よりも重たい状態ですが、筋肉が多くて重たい場合は肥満ではなく、体脂肪が過剰に蓄積した状態を言います。
肥満は一般的に適正体重から15 ~20%上回ると肥満と考えられます。
成長期のピークを過ぎてしまうと必要とする栄養の量は減少します。
そのため、成長期の勢いで食べさせ続ければ肥満になってしまいます。
肥満の状態というのは脂肪細胞が増えたり、脂肪細胞が肥大することによって脂肪の貯蓄が過剰になった状態です。
そのため単に体重が増えた状態とは異なります。
肥満の原因
肥満の原因としては大きく3つに分類されます。
- カロリーの取り過ぎ
- ホルモンの分泌異常
- 遺伝的要素
などが考えられます。
さらにその他の条件として、高い割合で肥満になる状況
- オスよりメスが肥満になりやすい
- 避妊手術や去勢手術した犬
太りやすい犬種
遺伝的に太りやすい素因がある。
- ラブラドールレトリーバー
- ダックスフンド
- ビーグル
- ポメラニアン
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- シーズー
ホルモンの分泌異常
先天的な場合や疾病による場合を除いては発生率は低いようです。
ですが遺伝的疾患にともなってなってしまう肥満は、栄養過剰が直接の原因ではありません。
食べさせ過ぎなくても太ってしまう。
また、去勢や避妊を行うと性ホルモンのバランスが崩れることになり、太りやすくなる傾向があります。
カロリーオーバー
一般的に見られる肥満の多くは、フードの食べ過ぎによるエネルギーの過剰摂取によるものです。
ごはん量を調整するのは飼い主なので飼い主が原因であると言えます。
食べるのを観察すると、犬は噛む回数が少なく、飲み込むように食べて短時間のうちに食事を終えてしまいます。
私たちからするともっと味わってほしかったし、もしかしたら少なすぎたのかもしれない。
このように思ってさらに追加してしまいがちです。
また、長時間のお留守番や帰宅が遅くなったときに、謝罪の気持ちや罪悪感から多めにフードを与えてしまう傾向があります。
また、間食としておやつを与える場合、ごはんの量を差し引いて減らすといった配慮をすることはあまり考えないでしょう。
結果としてフードの供給量は多くなっています。
肥満の影響
肥満になるとさまざまな器官に支障が出るようになります。
脂肪が増えることよって
- 呼吸器系疾患
もともと呼吸器系疾患を持っている犬は、首まわりなどにも脂肪が付くため圧迫されて症状が悪化する可能性があります。
- 皮膚トラブル
皮膚病になりやすくなります。太ることで皮膚がたるむためシワの部分に炎症が起こることも。
- 便秘になりやすい
脂肪が増えることで内臓のスペースが狭くなります。そのため便の流れが悪くなるため便秘になりやすくなります。
体重増加によって
- 四肢への負担が増加
体重が増加することによって、足や関節への負担が増加します。
その結果関節炎などになりやすくなります。
- 動きが悪くなる
脂肪が邪魔になるうえに、体重が増えて動きにくくなります。
そのぶん疲れやすくなるので、運動量が減ってしまいます。
結果、また代謝が落ちてしまう。
- 椎間板ヘルニアになりやすい
胴回りについた脂肪分は重く背骨への負担になります。
そのため、胴が短い犬種などは椎間板ヘルニアに悩まされることになります。
肥満による体内の変化
- 心臓に負担がかかるので、心臓病になりやすい
- 糖尿病になりやすい
- 尿路結石
- 肝機能が低下する
- ガンになりやすい
- 老化が早くなる
など種々の疾病の原因となります。
2つの肥満
遺伝やホルモン以外が原因の肥満の場合は、食べ過ぎが原因としか言いようがありません。
一日の必要なカロリーよりも多く摂取した分は、身体に貯蓄されていきます。
これが増えに増えると肥満になるわけですが、この貯蓄は肥満細胞に溜まっていきます。
肥満とは脂肪細胞が「肥大化する+過度に増加する」ことで肥満になります。
犬の肥満細胞は出生時に一定の数を保っていますが、エネルギー摂取が過剰になると脂肪細胞の数を増加させたり、脂肪細胞が膨らむことによって脂肪の貯蓄量を増やすことができます。
また、若齢期と成犬期では肥満のパターンが異なっています。
細胞増殖性肥満
脂肪細胞がため込めるのは哺乳類の場合3倍くらいの大きさが限界です。
そのため、それ以上太れません。
一般には若齢期(いわゆる成長期)には脂肪細胞を増加させる傾向にあり、脂肪細胞のサイズと数が増加します。
成長期の肥満は脂肪細胞が膨らむうえに、細胞も増えるという特徴を持っています。
これはかなりたちの悪い現象です。
なぜなら、いったん増えた細胞数を減らすことはできないからです。
太れる限界値が増えてしまうわけです。
その意味でも成長期の過剰な栄養は禁物です。
細胞肥大性肥満
成犬期には脂肪細胞の数は増加しない傾向にあるので、脂肪細胞自体を肥大させることによって貯蓄されていきます。
しかし、脂肪細胞が増えないわけではありません。
過剰な養分があれば対応して、肥満細胞は膨らみ、限界まで来ると増殖します。
増加しにくい傾向があるだけですね。
生き物は不思議です。
大人になってもちゃんとさらなるレベルアップによって太れちゃいます。
犬の減量方法
肥満の解消は人間と同じように犬でも簡単にはいきません。
計画的に減量計画を行っても短期間のうちには効果が見られません。
犬の場合、最低でも6週間以上必要で、うまく減量できてもそのあとの管理も必要となってきます。
ダイエットの方法は無理のない目標体重を設定し、現在のフードの摂取量やカロリーを段階的に減らしていきます。
カロリーを消費するには筋肉が必要です。
合わせて運動もするようにすれば効果的です。
軽度の肥満
肥満が軽度の場合、フードの給餌量を減らすだけでも体重を減らすこと可能です。
また、空腹感を抑えるため、1日の量を3~4回に分けて与えて空腹感を分散させましょう。
一日の摂取量を減らしてもごまかせます。
今までドライフードだけあげていた場合
今までの摂取量をはかって、ドライフードの量を60~70%に減らしましょう。
食卓の残り物も与えていた場合
ドライフードだけにし、さらに給餌量を70~80%に制限しましょう。
注意ポイント
フードの給餌量を60%以下にしてはいけません!
減量分40%の内訳は20%が過食分の是正、20%が真の減量分となっています。
最低限の栄養素が失われては健康が保てません。
重度の肥満対策
重度の肥満の場合には、市販のダイエットフードを利用しましょう。
ダイエットフードは、通常のものよりもカロリーを抑えて作られています。
その種類は大きく2つに分けられます。
脂肪分の代わりにナニで代用しているかです。
- 食物繊維を増やしたタイプ
- でんぷんを増やしたタイプ
繊維を増やしたタイプの方がエネルギー摂取の制限が大きく、食物繊維は空腹感を抑える効果があります。
しかし、繊維が多いタイプはうんちの量、ガスが増える。
また、フンの中にタンパク質が摂取されきれずに排出されてしまう。
そのため高繊維で低たんぱくタイプのフードは、飼い主には健康的なイメージを受けますが、実際にはタンパク質不足を招く可能性があるので、避けたほうが良いでしょう。
やはり運動は必要
減量するには運動は欠かせません。
食事制限に加えて運動量を増加させると、筋肉量は減らずに脂肪量が減少します。
しかし、肥満犬に突然過激な運動をさせるのは危険なので注意が必要です。
身体への負担になりますし、犬のストレスにもつながります。
まずは1日に20分程度の短いものからです。
これを1週間に2~3日から始めて、次第に毎日へと増やし、さらに1日の運動時間を長くするという順序で運動量を少しづつ増加させて慣らしていくようにしましょう。
まとめ
犬も人も肥満になって良いことは一つもありません。
数多くの病気の原因となることや寿命が短くなってしまうことなど、その不利益は計り知れません。
犬の肥満の原因はほどんどが「飼い主さん」です。
肥満になってから減量することはかなり根気が必要となります。
また、ダイエットフードという経済的な出費にもつながります。