ダックスフンドやシェットランドシープドッグなどの一部の犬種に、灰色や白色のまだらやぶちになっているカラーがあります。
色合いがとてもきれいで結構人気があります。
このようなまだらの色柄を下記のように呼びます。
- ダップル:ダックスフンドの斑模様の場合
- ブルーマール:シェルティの斑模様の場合
シルバーダップル
ダップル:まだら・ブチのある動物
英語でダップルはこのような意味があって、ダックスフンドのカラーのひとつシルバーダップルは銀色のブチが入るため大理石のような模様が独特な美しさを醸し出します。
ブチやまだらを作る遺伝子?
このようなまだらやぶち模様になるのは「マール遺伝子」という遺伝子の影響によるものでコレを持っていることでて独特のカラーになります。
色素を作り出す機能を抑制する働きがあるため、被毛の一部が灰色~白色になるという現象が起こり、ブチやまだら模様を作り出します。
ベースカラーがブラックタンの犬
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マール遺伝子を持つ犬
交配することによって、ブラックのベースカラーは脱色されて薄くなり、灰色や白系のまだら模様がランダムにはいった犬が生まれてきます。
でも、綺麗だったり可愛い柄になるだけではないんです。
マール遺伝子の不都合
マール遺伝子は色素を作り出す細胞「メラニン細胞」が胎児のときに全身に行きわたらないようにする作用があります。
そのため体の全体でメラニン細胞を持たない部分がたくさんあることになります。
メラニン細胞が足らなかった細胞では、組織を作るための材料が足らなかったために不都合が起こります。
- 難聴
- 先天性の小眼球症
- 失明
- 脳疾患
- 心臓疾患
このようにマール遺伝子の影響が強く出た部分では、発達しないため障害が起こる可能性があります。
しかも、遺伝しちゃうのである。
遺伝の確率
子供が生まれるためには遺伝子を父親と母親の両方から半分ずつ受けとって、合わせて100%で子供の遺伝子となっています。
そのため、親と子の遺伝子は完全に異なります。
また、遺伝は父と母両方から当然受け継ぎますが、親の特徴が遺伝によって形になるためには、鼻の形は父親、目の形は母親というようにその特徴はどちらか片方しか形にできません。
ですが、その確率は50%:50%ではありません。
例:瞳の色の場合
- お父さん:黒い瞳
- お母さん:青い瞳
この場合、子供は高確率で黒い瞳になります。
これには理由があります。
黒い瞳の遺伝子が優性遺伝子だからです。
優性遺伝子とは、劣性遺伝子と両方を受け継いだ時に必ず優性の方の特徴が現われる特徴があります。
どれが優性遺伝子かすでに決まっている
優性 | 劣性 |
黒髪 黒い瞳 長いまつげ 二重まぶた | 金髪 青い瞳 短いまつげ 一重まぶた |
このようにどちらが優性遺伝子かは決まっています。
一重まぶたが生まれるには?
劣性遺伝子である一重まぶたは、なかなかでてこないことになります。
優性遺伝子ばっかりでるのでしょうか?
- 父親 黒い瞳:M(大文字)
- 母親 青い瞳:m(小文字)
このように表現して説明します。
下記のようなこの場合、母方のおばあちゃんだけ青い瞳になります。
黒い瞳は優性遺伝子だから、Mを持つ人は黒い瞳になっちゃうからです。
この場合、mmのときだけ青い瞳になるので
子供は4分の1の確率です。
マールの掛け合わせは禁忌
マール遺伝子はダップル遺伝子なんて呼ばれていて、特徴的なまだら模様の毛色を作り出すには必須の遺伝子です。
しかし、その反面さまざま障害を持って生まれる場合が多く、ダップル同士を交配させてしまった場合には、6~9割が死産となります。
数匹生まれてくる子犬のほどんどが死んでしまうわけです。
マール遺伝子は「半致死遺伝子」という異名を持つほどです。
上手く生まれても問題を抱える
産まれてきたとしても障害や異常を持つ可能性が高くなっています。
- 神経障害
- 行動異常
- 盲目
- 難聴
- 内臓障害
そんなマール遺伝子は子孫に受け継がれます。
特にマール遺伝子を持つ犬同士を交配させることは、悲惨な結果になるとわかっているわけです。
知りながら、交配を行うことは非常にむごいことです。
ダブルマールなら逃れられない
Mがマール遺伝子です。
mはそれ以外の毛色の遺伝子です。
最も禁忌とされているのは、ダブルマールの交配です。
お父さん犬がMMの場合、ダブルマールと呼ばれており、図のようにM(マール遺伝子)が必ず受け継がれます。
MMで遺伝してしまった場合は特にその影響が強く、内臓疾患を持って生まれたり、死産となる可能性は50%と非常に高くなっています。
無事に生まれたとしても、重篤な色素疾患を持って生まれる可能性が高いです。
隠れマール
自分の愛犬に子供を作りたいと考えたとき、体の一部に小さな白い斑点がありませんか?
もしあったとき、マール遺伝子の影響を受けている可能性があります。
その犬には障害が見られず健康だったとしても、マール遺伝子を持っている場合には遺伝する可能性があります。
確率50%
Mがマール遺伝子
片方の親にマールが一つでも受け継がれている場合
確率は50%で受け継がれてしまいます。
そのため、繁殖に使うべきではないと言われています。
また、この遺伝子によってダップル柄が作られるので、マール遺伝子を持っていない場合には、独特の色や柄は生み出されない。
ポイント
白い斑点がすべて悪いわけじゃない。
白い毛色を作る遺伝子には、2種類あります。
- ブチになるDNA
- 全体の被毛の色を薄くするDNA
全体を薄くする遺伝子は、悪い影響をあたえるような遺伝子ではないと言われています。
まとめ
マール遺伝子を持つ犬は、珍しい柄がでるため高値がついていますが、それでも好んで選んでしまう飼い主さんもいるでしょう。
知識のないブリーダーや金儲け主義のブリーダーは人気のカラーであるダップルやブルーマールをを生み出そうと必死に交配を何度も行っていると考えらえます。
しかし、その一匹を生み出すために多くの兄弟は死産となり、生まれた中でもさらに、明らかに障害持つものが取り除かれてようやくそこににいます。
その一匹も、多くの場合さまざまな疾患に苦しむ可能性があり、知らずに飼った飼い主や家族は心を痛めることが考えられます。
何も知らない飼い主さんがダップル同士を交配させてしまうこともあります。
ダップルは珍しい柄ですが、こういった背景があることも考えて行動しましょう。