鼻が効くというイメージの犬ですが、実は耳もかなりの高性能です。
ワンコの耳はチャームポイントのひとつですが、ただ可愛いだけではありません。
人間は犬とは太古の昔から共に暮らしていきましたが、その理由の一つとして私たちが持っていない能力を持っていたことです。
犬は人間が聞こえない音が聞こえる
犬の耳には私たちが聞き取ることができない高音まで聞こえています。
音の高さは「Hz(ヘルツ)」という単位で表現されます。
数値が小さいほど低い音、大きいほど高い音になります。
聞き取れる音域 | |
犬 | 12~5万ヘルツ |
人間 | 12~2万ヘルツ |
聴力は犬も人も個体差はありますが、平均するとこのくらい聞こえます。
日常の音
周波数 | 音の種類 |
250~4,000Hz | 日常会話 |
1046.5Hz | ピアノの真ん中にある「ド」 |
2,000~4,000Hz | 鳥のさえずり |
7000~13,000Hz | ジェット機の音 |
人間との違いは犬は50,000ヘルツまでの人間には聞こえないほど、ものすごく高い音を聞きとれます。
得意な音域がある
3,000~12,000ヘルツの間
この音域は犬にとって得意な部分で、人間には聞こえないくらい弱い音でも聞き取れる。
この能力によって、「小動物の発する高音の鳴き声」を聞き取って察知することができたわけです。
その代わりに現代社会に生きる犬たちは、掃除機やドライヤー、電動ドライバーなどから不快な高音をより大きく聞こえてしまいます。
犬笛にも利用される
犬笛は犬の聞こえる音域が広いことを利用した笛です。
この笛は人間が聞き取れないようなものすごく高い音「高周波音」を出すことができます。
私たちには聞こえない音が出せるので、スパイ活動やドッグショーなどに使われ、犬にだけ指令を送りたいときに鳴らしていました。
犬笛は16,000~22,000Hzくらいの音が出る笛です。
スライドして調整できるタイプは30,000Hzくらいの音が出る。
聴覚がちょー鋭い
このような実験結果があります。
鉄板の上に3mmの玉を落とした時の音を聞きとれる距離を調べたものですが、犬の場合は人間の約4倍の距離でも聞き取れたそうです。
日常生活では、聞き取りやすい音の違いや騒音などによる音の打ち消しあいなども考えられますが、少なくとも人間とは比べ物にならないほどの耳の良さを持っています。
静かな環境で、途中に障害物などなければ1㎞先の足音でも聞き取れると言われています。
また、犬は落下音には非常に敏感に反応する傾向があります。
聞き分ける能力
犬の耳はかなり高性能で、半音の1/4の音程の変化を聞き分けることができます。
この能力は、野生動物を狙う際に足音の違いを聞き分けることが可能です。
そのため群れの中からケガをしている動物や子供などを狙うことができました。
このように聞き分けることが得意なので、飼い主さんが帰宅した際も、車のエンジン音の違いや足音を聞き分けて、帰宅を誰よりも早く知ることができるのです。
家族が気づく前からそわそわしちゃうわけですね。
音を拾うことが得意
犬は人間と違って頭の上に耳が付いています。
さらに、自分の意志によって耳の向きを前後左右と片方づつ別に動かすことができます。
これにより、広範囲に渡って音を拾うことが可能です。
人間の場合は16方向から収音できますが、犬は32方向なので2倍の能力があります。
集音アンテナとしての性能が大きく違うんですね。
音の位置がわかる
動物の多くは私たち人間や犬、猫のように耳が2つあるのですが、これは音がしたとき、2つあることによって、その方向や大体の位置がなんとなくわかるようになっています。
これはを音源定位能力というのですが、動物でそれぞれその能力は違っています。
音源を見つける3つの要素
動物にとって獲物がいる方向や外敵から回避するための方向、注意を向けるべき方向などを知る手掛かりとして音がどこからしているのかを察知することは非常に重要な能力です。
そのため、3つの能力を総合的に脳で分析して、音のする方向と距離、高さや低さなどを脳内で分析して知ることができるようになっています。
1.両耳間到着時間差
右耳と左耳で届く音の時間差によって距離がわかる能力です。
斜め右で音がすれば、右耳で聞こえてから、左耳で聞こえます。
この左右で聞こえる時間差によって距離を知ることができるのです。
左右の耳に入る時間差から計算しているので、頭が大きい犬の方が耳の距離が離れているため正確に音源を探知できるといえます。
2.両耳間音圧差
右耳と左耳での音の大きさの違いによって位置を特定する能力
左から大きく聞こえたら、左から音がしてるって分かりますし、音の大きさから距離感を感じ取れますよね。
3.耳介で感じ取る
人間だと顔から飛び出ている部分、犬猫なら三角の耳の部分が耳介です。
この耳に当たる音の方向を感じ取ることができる能力があります。
また、音を集める部分でもあります。
人間と犬の違い
意外と音で位置を知る能力は、生き物の中でも人間はかなり高性能です。
馬、牛、山羊 | 20~30度 |
犬 | 8度 |
人間 | 1度 |
正面の音ならば人間は1度単位の誤差で位置を特定できます。
人間の耳介はひだがあって複雑ですが、犬の耳にはひだはありません。
耳のひだは、音の来る方向によって微妙に反射角度が変わるため、その方向を細やかに分析することができるようです。
ひときわ高性能な耳を持つ私たちですが、正面だけに特化した能力です。
そのため、真横や左右の分析力があまり良くありません。
もちろん真後ろの距離感もイマイチです。
耳は自由に動かせませんが、二足歩行なのでその場で首と体の向きが変えられるためかもしれません。
犬の耳のココがすごい
私たち人間の耳は正面だけなら、犬よりも正確に音のした場所を知ることが可能ですが、犬のすごさはそこではありません。
犬の音源を探知する能力は誤差8度なのでかなり高性能なほうです。
しかも、犬は耳を左右個別で自由に動かすことができます。
そのため、顔の向きを変えないで、即座に音のする方向を察知できます。
犬のしぐさでたまに見ることがありますが、首をかしげる動作ですが、これは右と左の耳の位置を変えることで音の正確な位置を察知しようとしているところです。
また、私たちが聞こえない小さな音や高周波も聞き取れ、広範囲を聞くことができ、その位置もかなりの精度で知ることが可能ということになります。
これらのことから、犬は人間よりも広範囲に気を配ることに重点を置いた能力です。
犬種や体の大きさは関係ない?
音は空気の振動によって伝わっています。
そのため、障害物にぶつかれば反射したりします。
そう考えると耳は立ち耳の方が、たれ耳よりも音を集めやすいということになります。
また、高周波の音ほど障害物に弱いため、耳は垂れていないほうが聞こえやすいと考えられます。
また、体の大きい犬は頭が大きく、左耳と右耳の距離が離れているため、音のする位置をより正確に察知することができます。
そのため、それほど顕著な違いはありませんが、犬種やサイズで耳に関する能力に違いはあるでしょう。