犬の目の構造は一部を除いて、人間とそれほど違いはありません。
しかし、見えている世界は大きく違っているようです。
やはり、犬は狩猟を行って生きてきた生き物なので、目の構造にもその特徴が現われています。
視界が広い
人間の視野が180度に対して、犬は250~290度と広範囲にわたって視野が広がっています。
ただし、パグのような短頭種などは目の位置から150度くらいの視界になっています。
人間は正面の奥行きを立体的に見渡せるような能力がありますが、犬は広範囲に渡って視界が広がっています。
自然の中でまわりを警戒しやすいようになっているようですね。
暗くても見えます
犬はもともと夜行性の動物です。
そのため、暗いところでも目が見えるようになっています。
その認識力は高く、人間の約5倍と言われています。
構造
犬の目の網膜には特殊な反射板(タペタム層)というものがあり、月明りや星の光のようなわずかな明るさをタペタム層が反射させて光を集めています。
これによって人間よりも暗闇で見ることができます。
そのため、夜行性の動物は夜に撮影するとフラッシュや照明などによって目が光っているように見えます。
目が発光しているのではなく、タペタム層に反射して目が光って見えるわけです。
瞳が青いと異なる?
シベリアンハスキーなどの犬種は目が青色をしています。
彼らはタペタム層を持っていません。
このタイプの犬種は、1年中雪が積もるような環境で育った犬種です。
彼らの環境は雪が反射するため、夜でもよく見えた為タペタム層が必要なかったためです。
また、虹彩が青色なので光が透過しやすいということもあるようです。
視力は良くない
犬の視力は実際、あまり良くありません。
0.2~0.3程度と言われています。
人間の目は網膜にある細胞が、余分な光と映り込みを吸収します。
そのためハッキリと物を見ることができます。
しかし、犬は暗視ができるタペタムを持っていますが、それゆえに余分な光と映り込みが乱反射するため昼でも夜でもぼやけて見えてしまいます。
目が悪いということではありません
視力0.3程度の視界はこんな感じです。
目の悪い人はわかると思いますが、くっきりは見えませんが見えるということです。
私は目が悪いのでこんな経験があります。
目の良い人が目の悪い人に対して、
「メガネはずしてみたら指何本に見える?」
などと聞いたりしますが、本数はわかります。
視力が悪いというのは見えないのではなく、ピントをうまく合わせられないだけなのです。
ピントが悪いだけ
犬は広範囲を見れるように目が人間よりも横についているので、正面の1点に焦点を合わせにくいこと。
遠近を調整する眼球の筋肉が弱いためピント調節が苦手です。
そのため、近くを見ることは苦手です。
止まっているものをしっかり見ても、ぼやけています。
犬も近くのものはこのように見えると考えてください。
優れた動体視力
犬の目は止まっているモノをハッキリと見るのは得意ではありませんが、そのかわり動体視力がとても優れています。
止まっているものよりも動いているものを見ることが得意です。
犬がバッティングできれば、こんなふうに見え、クリーンヒットさせることができるかもしれません。
犬は捕食動物なので、動いている標的を認識する必要があるため、眼球を動かす筋肉が発達しています。
優れた動体視力は、遠くで動いた獲物を発見し、追いかけることができたわけです。
また、捕らえる動物の決死の反撃にもその動きを見切ることができたと思われます。
どれくらいの能力なのか?
止まっているものは400mまで見えますが、動いているものは800m先でも認識することができる性能があります。
動体視力は犬種によって若干差があり、羊を追いかける牧羊犬などは、動いていれば1500m先でも人の合図を認識できる能力があります。
犬はテレビを楽しめない?
ライオンやチーターが草食動物を捕らえるシーンなどテレビで見ることがありますが、それに対して愛犬は反応したり、興奮したりといったリアクションがありません。
なぜなんでしょう?
これは、犬が優れた動体視力を持っているがゆえに楽しめないのです。
テレビはパラパラ漫画をものすごく早くした構造になっています。
1秒で30枚、静止画が見えているため、私たちには動いているように見えます。
ですが、犬は人間よりも遥かに動体視力が良いので、カクカクした動きに見えて動画として認識できていません。
テレビは絶えずコマ送りに見えるのです。
犬の目にはテレビはパラパラ漫画の域を出ていないということです。
人間とは違う色合いが見えている
動物は色を感知する細胞、錐体(すいたい)というものを持っています。
この細胞は網膜にあって色を見分けることができます。
犬と人間は目の構造は似ていますが、錐体は人間と犬では細胞の数が違うため、認識できる色に違いが生まれています。
そのため私たちが見ている世界とは少し色合いが違うようです。
錐体細胞には種類がある
私たち人間は錐体細胞が3種類あるため、それぞれが「赤・青・黄」を認識することができます。
そのため、その3色の組み合わせによる色が認識できます。
青と黄色が混ざった色は緑なので認識できます。
私たちの視界は色鮮やかな世界が広がっています。
犬の場合
色を認識する細胞である錐体細胞が2種類のため、見えている色としては「青色と黄色」を認識することができるというわけです。
色の組み合わせによって、青・緑・黄色・紫色などが認識出来るという事が分かって来ていますが、赤色は認識できず、黒とまでは言わないですがグレーのように見えているとわかってきました。
主に暖色系はグレーに見えてしまうわけですね。
おもちゃの色選び
芝生の上でボール遊びする場合には、同化しない色を選ぶ必要があります。
- 緑のボールは当然、かなり見にくい。
- 木陰に入った赤いボールはもはや見えない。
- オレンジ色のボールは薄い黄色になるので、芝生とかなり近い。
おもちゃは赤を選ばないようにしよう。
いつでも赤色は見にくい。
正解はコレ
濃い目の黄色は明るくてよく見える。
濃い青色はくっきりよく見える。
こんな風に選んであげましょう。
目が悪くなっても平気?
犬も老化が進行すると白内障や緑内障などになってしまいます。
人間の場合、手術をして人工レンズを入れるのが一般的ですが、犬の場合健康状態や若さが必要になってくるため老化してからの場合難しいでしょう。
しかし、人間は目からの情報を最も重視していますが、犬の場合は異なります。
犬はもともとあまり目は良くありませんが、耳や鼻の感覚が非常に優れているのでそれらで補っています。
そのため生活への支障は少ないと言われています。
まとめ
どうやら犬の目は思ったよりも視力は良くありませんが、決して目が悪いわけではないようです。
私たち人間とは見たいものが違うのでその機能も異なるようです。
比べてみると違いは明らかです。
狩りをしていた名残を強く残し、夜でも明るく見通すことができ、動体視力は動物の動きを見逃すことなくはっきりと捕らえることができます。
近くをハッキリと見ることは苦手ですが、広範囲を見ることが可能で動きのあるものならば、意外と遠くても見えることがわかりました。
色について
赤色は灰色に見えるということは獲物を捕らえて食べるとき、血液が灰色に見えるわけです。
当然、肉もグレーに見えるのでしょう。
不思議ですね?
どうやら食事を目で楽しむことは難しそうですね!
年を取ると人も犬も白内障を患いますが、人間ほど重大ではなさそうです。
しかし、見えたほうがいいのは確かです。
治すのは難しいですが、「白内障の進行を遅らせる薬」は存在しています。
若いうちから始めるのもいいかもしれません。